26年間続いたひとつの教室が今年の春、幕を下ろしました。アートスタジオ五日市はあきる野市戸倉にある版画スタジオで、かつてここには戸倉村の村役場があったのです。村は昭和30年代に合併により廃村となり、平成5年に建て替えられたこの場所は好景気の時代を背景にレジデンス事業を行うアートスタジオとして生まれ変わりました。
版画教室を始めたのは平成11年(1999年)の7月。役所の方から年に3ヶ月しか使われなくなっていたスタジオを憂いて相談があり、市主催の講習会の後、参加者の皆さんとも意気投合し、一年を通した版画教室を開くことを認めてもらいました。始めた当初はこのあたりでは珍しかったらしく10人くらい生徒さんが来てくれました。ところが3年して版画集を作り、展覧会を開くとその後誰も来なくなってしまいました。しばらくずっと地元の一人の方が通ってきてくれるという状態でした。そして市とは自主運営でという約束をしましたので、その通り運営していました。
2004年から一年間、私はポルトガルの奨学生となり教室を留守にしてしまいました。ところが戻ってくると生徒さんが1名増え、その後は増えることもなく減ることもなくいましたが、少しずついろんな方が来られるようになって、やがて出会いの機会が増えました。今大活躍している作家さんも来ていましたよ。皆さんとても明るかったです。
15年目くらいから、教室の存在が地元の輪の中にしっかり入ったなという感じがしてきました。ただ建物行政のよくあるパターンで数年やったら文化事業はカットという終末をあちこちで耳にしていましたので、少しでも長く引き伸ばせないかなという気持ちもあったんですが、正直それも薄れてきたころでもありました。ただこちらも長く居させてもらった分、使いやすいスタジオになったんではと思っていました。幸い本事業のレジデンスは毎年9月1日から11月30日まで開催され続け、コロナの中止の2年をはさんだ後に晴れの第31回目を迎え、この時は多くの気持ちが一つになった果実、そんな気がしました。レジデンスは今年も続いています。
教室を開いた時期はちょうど自身の中では結婚があり、子供が生まれ、仕事のいい時も悪い時もあり、親や家のこと、いろんなことが重なりました。それもこれも、このスタジオがあったから乗り越えてこられたんだなと思っています。いまさらながら感じる今日この頃です。
年初、教室閉鎖と決まったのは急な通告でしたが、ある意味この旧村役場に棲まう有象無象の霊たちから、「あー、お前はもういいよ」って言われたからなんじゃないか、と思っています(笑)。
教室を通して多くの方々に出会え、そして支えていただき大変ありがとうございました。
たくさんの思い出に感謝しています。皆さんお元気で。またお会いしましょう。
そしてサンキュー、アートスタジオ。
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