2010年10月5日











           
 Oceans in between


 Arrabida  and  Nagasaki











 10月1日午前中、長崎県立美術館で飾り付けを行いました。展覧会名は「Portugal Arte e Poesia in Nagasaki」です。日本ポルトガル修好150周年記念事業の一環です。今回の会場では仮設壁面の展示とあって版画作品を中心に出品しました。長崎から見える海には日が沈みます。その風景を思いに重ねて形になったものをいくつか選んできました。


 "Ocean in silence"はポルトガルのアガビーダ修道院を訪れた際、その言葉にできないほど非常に強い印象を表したものです。画面には修道院で撮影したイエスの噴水と壁龕(へきがん)の写真を貼りこんでいます。いずれも無数の貝殻で装飾されています。修道院内は小さな街のようであり小道と庭園、天井の低い小さな個室の棟、非常に暗い祭壇と聖人像などがあります。入り口にはしゃれこうべを手にするマリアの像が格子の中に横たわっています。(暗すぎて撮影は困難でした。)修道院はアガビーダ山地の海の見える断崖にあり、セトゥーバルの港とトロイア半島をかなたに見下ろす僻地にあります。この修道院は13世紀に建てられたといわれ、ここで祈りをささげた修道僧たちの中には遠い日本に布教に出た者もいたでしょう。瞑想の合間に修道僧たちは屋根瓦を作っていたそうです。(南欧によく見かける半円筒のテラコッタ瓦タイルは人の足でかたどりをしていた名残だそうです。)私も(2002年当時)小窓からはるか日本の港を思いました。長く遠い風景と時間の旅です。今回、長崎に来て私の中ではふたつの風景がかすかながらつながったように思えます。
 
「植相八景-四 星辰」という作品では両脇に敦煌星座表(世界最古の紙に描かれた星座表)の注釈を引用してあります。中央上部には恥ずかしながら私製の漢詩を載せました。内容は私の工房の屋根に当たる雨音を聞きながら、その水滴がやがて大海原に出でて大西洋に遡上するという、技術的には出鱈目な漢詩ですが、ここで詠んでいる海も長崎近辺のイメージです。


 もう1点は歴史の事件としての関連から「階段の男」(1996年作)を出品しました。制作年に広島原爆資料館を訪問し見た、石段に残された影を描いたものです。この影も私の中に強烈な印象を残しました。原爆により一瞬のうちに蒸発し、影となった人たち(男女)の象徴としてこの作品は改題せず出品しました。



 1日夕方から長崎市民活動センター(長崎市馬町・旧長崎市長公邸)の歴史ある洋館で長崎ポルトガル知る知る塾の皆さんと一緒にタイルワークショップを開催しました。力作が次々と出現し焼きあがり次第、スライドにアップしてゆきたいと思います。


 2日午後から展覧会オープニングセレモニーがあり、多くの方々にご来場いただきました。また作品にもいろいろご意見やご感想、ご教示をいただきました。ありがとうございました。
(アガビーダ修道院は修行をもっぱら執り行う「観想修道院」と教えていただきました。)
2002年に偶然撮影がかなったアガビーダ修道院内の写真を今回は掲載します。


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